サステナブルデザイン 気候をデザインすること

今井です。
今日、野沢正光さんの特別講義が上のタイトルでありました。

今回はその内容を自分なりにまとめたものをレポートします。

内容は大きく3部構成で、最初に『1930年代〜70年代の日本の建築について』、次に『技術的観点からみたデザインの変遷について』、最後に『野沢さん自身が設計した建物について』で語られていました。


1.『1930年代〜70年代の日本の建築について』
ここでは、野沢さんいわく【「デザインすること」を自分に説明してくれる理屈がほしい】ことを体現した建築を取り上げていました。

最初に、昭和初期の実験住宅である「聴竹居」(設計:藤井厚二)を紹介して、この時代に高温多湿の気候に対していかに『夏を旨とする』建築を設計しようとしていたかを説明してくれました。

続いて、「山越邦彦自邸」や吉村順三の作品(「NCRビル」「脇田邸」「亀倉邸」「宮本邸」「池田山の家」)を取り上げてました。

特に、「NCRビル」(1962年竣工)は、ファサードに設備がデザインされている建築として、レイナー・バンハムの「環境としての建築」に紹介されるに値する作品との話は刺激的でした。


2.『技術的観点からみたデザインの変遷について』
続いて、野沢さんは「サステナブルデザインが次の技術テーマではないか?」と述べ、近代以降の技術の変遷について、海外の実例を挙げながら語ってくれました。

具体的には、時代順に
「ブルネルが設計した橋」…設計プロセスでの合理的アプローチ
ストックホルム駅舎」…気候的にスチールで作るのは難しいので集成材で設計
「ファン・ネレ工場」…目的に合わせたものを、目的に合わせて作る
「グリムショウが設計した巨大温室」…3層のメンブレンで構成されていて、湿度の状況に応じてコントロール可能

そしてその流れで、現代のノーマン・フォスターやレンゾ・ピアノの建築を『エコロジー』と『サステナブルデザイン』の2つで説明でき、現代版“Less is More.”を実現しているのではないか、と野沢さんは説明されました。ここでは、Less=最小限の資源材料、More=より快適に作る、を意味しており、サステナブルデザインをうまく言い当てていると思いました。

さらに、【気候をデザインすること=その場所の微気候の読み取りが大事(府中と国分寺でも異なる)】や【環境をコントロールするテクノロジーは、様相に合わせて様々に変化しているのではないか?】との発言は印象深かったです。

ちなみに後者の発言は、ドイツの構造家ヴェルナー・ゾーベックが設計した「ガラス張りの自邸」や「ポストタワー」を引き合いに出しながら出てきたものでした。


3.『野沢さん自身が設計した建物について』
最後に野沢さん自身が設計された「いわむらかずお絵本の丘美術館」「長池ネイチャーセンター」「野沢正光自邸」を紹介して、講義が終わりました。

その各建築では、随所に気候を目に見える形でデザインに落とし込んでいて、無駄がなくかつすべてのデザインが説明可能である印象を受けました。

特に【「痛まないこと」が建物をつくる根拠になるのではないか?】との発言は、前半で紹介された「NCRビル」と通じるもので、今回の講義の中でも伝えたかったコア部分であると思います。


4.まとめ
野沢さんは、【建築は骨・皮・マシンの3つで出来ている】と述べ、この3つそれぞれの理屈あるデザインを通じて、サステナブルデザインが実現できると言いたかったのだと思います。

それは例えば、骨であれば木構法のアイデアであり、皮であればペア障子であり、マシンであれば温熱の供給システムであったり。

加えて、「Royal Festival Hall」で『快適な室内と快適な運営』、「Tate Modern」で『建物のプログラムを考えること=建物を継続的に使うために必要なこと』と指摘していたように、ソフト面をデザインすることの重要性も考えなくてはならないでしょう。

今日の講義を聴いて、自分の中でのサステナブルデザイン観がかなり整理されました。その上で、去年読んだ『環境としての建築』をもう一度読み直してみようと思います。