野沢正光レクチャー


三井です。
レクチャーの後の懇親会で、いわむらかずお絵本の丘美術館の話になりました。DECoでの坂本功先生インタビューにむけて考えていたことにつながる話があったのでメモ程度ですが書いておきます。

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いわむらかずお美術館について
1.地場の木材(スギ)を使用。構造用の大断面材を取った後の辺材は板材としても用いている。
2.在来構法?稲山さんによる構造。柱を長押のように挟み込む様子がアクソメでは示されていた。


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「地場の木材を使用すると、輸入材を使用するのに対して輸送エネルギーが少なくて済む」

 そこに人間のエネルギーが考慮されていないのでは、ということが気になった。木材を切り出したりするのに日本でも発展途上国でも労働力(負荷)は同じといっていいだろう。しかし、日本人は1人あたり25人奴隷がいるのと同じくらいの生活を、エネルギーを使うことで実現しているらしい。(『地球と生きる家』に出てくる話、「奴隷∝エネルギー」として捉えていいと思う)一方、地球全体の平均では現在1人あたり10人奴隷を従わせていて、たとえばソマリアとかは奴隷0人。つまり先進国に住む日本人は超高次エネルギーの産物な訳だ。
 結果的に省エネになっているのはどちらだろうか。奴隷0人の国で切り出して輸送エネルギーが必要なのと、奴隷25人の日本で切り出して輸送エネルギーが少ないのと。野沢さんは省エネうんぬんについてはっきりとは答えてくれなかったが、エネルギーコンシャスになりすぎず、地場の木材を使用するという流れをつくり地場産業を活性化させる、という見方において地場の木材を使用する事を肯定的に考えているようだった。
 現段階ではある種のスタイルといえるかもしれない。OMソーラーのシステムやトヨタプリウスも、製造するときのエネルギーと天秤にかけたらなんともいえない、「省エネ」というスタイルにすぎないかもしれないが、新たな技術や流れをつくる事はいずれ「省エネ」「地球環境」へ根本的に効いてくるだろう。


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「在来(伝統?)構法で、例えば『柱+貫(梁)+楔』だと、地震のときに粘ることができる。少しくらいゆがんだり傾いても、被害の度合いに合わせて楔を新しくしたり、ゆがんだ貫を取り替えたり、時には瓦まで取り外して修復することができる。」

 確かに、2*4などでは修復するよりもそっくり建て替えることが選択されるかもしれない。伝統構法の利点である。だが、誰が修復する?腕のたつ職人が必要だし、手間もかかる。


「構法について。まず伝統構法では職人の技術を必要とする。その修復に関してもである。一方、筋交いや構造用合板を用いる場合や、2*4やパネル構法では、難しい継手仕口は必要とされず、金物で組み合わせるたりすることができる。
構造計算について。柱+貫では、その「粘り」をコンピュータによりシュミレーションしなければならない。(柔構造?)一方、筋交い、構造用合板、パネル構法では、構造として効く壁がはっきりしていて、必要な壁量などの基準が定めやすい。(剛構造?)」

 時代は変化していく。柱や梁などの大断面材を無垢で用い、構法として貫や継手仕口を採用するには、昔ながらの林業、製材の体制や、職人が必要とされる。ヒノキやケヤキを無垢で用いるためには立派な木を育て、さらに長い間乾燥させなければならない。今の経済、ライフスタイルのサイクルに合わないだろう。


 「職人」とはよいモノをつくるためにこだわりをみせる、そういうスピリットをもった人たちだと解釈している。大工の田中文男は、低コスト化や建築所要時間短縮のためには、パネル形式の採用などにも意欲的で、集成材を用いた大規模木造も手がけている。「大工の仕事は変わっていく、親方に教わった事ではもう食えない。今、職人技が必要だとかもてはやされているけど、実際、一生食える職人技なんてものはない。」昔の技術を習得しているだけで、昔に固執しているのが職人ではないということだ。集成材に嘆き、接合部の金具に嘆くのではなく、木目の美しい集成材を突き詰めたり、金具のディテールを美しくおさめる職人が出てくれば木造が進化していくかもしれない。

 効率化、標準化されていく中で木造のあるべきかたちが、今日のレクチャー、DECoでのインタビューを通して見えてくるような予感。まだまだ甘いけど。

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