今後のDECoについて思うこと

(文:川島範久)

環境的視点からのデザインとは何か。


それを考えるために、このDECoという勉強会を立ち上げたわけですが、
おおよそ一年とちょっと経って、色々なことを経験して、
少しずつ、なんとなくですが、整理がついてきた気がします。


「環境」という言葉は非常に曖昧で、
事実、その曖昧さが「DECo」の可能性を広げている部分もあるわけで、
それはそれでいいと思っています。



例えば、最近DECoが関わって来たプロジェクトで言えば、
「五月祭ドームプロジェクト」から最も学んだのは、DECo的な観点から言えば、「施工性」ですね。


まず、ドームはオスとメスというたった2種類の木のパネルだけで構成されていました。おかげで、二つの型枠を制作しておけば、あとは大量生産するだけなので、作業はラクになりました。
また、あのパネルは、人が手で持ち運べるくらいの、大きさ・軽さになるようにこだわってデザインされていました。結果、立ち上げ当日に機械の手を使わずに、人の手だけで、かつ、かなりの短い時間でくみ上げることができました。また、解体、片付けもかなり短い時間で済みました。
また、木は加工性に優れているため、現場で想定外の傾斜があるところがあったのですが、さっとノコギリで削って素早く対応できていました。


結果、本当に素晴らしい空間が出来上がっていて、久々に「建築って凄いな」と感動した覚えがあります。この空間の素晴らしさは「デザイン」だけの力ではなく、与条件に「施工性」を入れていたからなんだろうと思います。
短期間で、少ない労力で、少ない材料で、建築をつくるのは、明らかに省エネルギーですよね。「施工性」は「環境的な観点」のひとつの可能性だなと思いました。もちろん「施工性」だけで良い建築はつくれませんが。



また、DECoテーブルのプロジェクトから学んだのは、
「端材からでも、アイデア次第で面白いものがつくれる」ということ。
まんまですが、やっぱりそれを実際にそれを経験できたのは素晴らしかったと思います。端材を出さない、もしくは端材を有効利用するという、いわゆる材料のカスケード利用は、ストレートに環境にやさしい行為で、環境的でした。ただ、これは結果として、かなり面白いカタチのものができたからよかったんですよね。「端材を使って」という稲山先生から与えられた環境的な観点の与条件が、あのデザインに導いたわけで、そこが非常に面白かったんだと思います。



今後も、あまり「環境的」というものを決めつけずに、色々なことに取り組んで行けるとよいと思います。そういうわけで、まずはピソコモド、ArvhiTVと頑張って行きましょう。



ということなんですけども、ただ、雑誌社の記事作成に関わって感じた事は、先人の作品を勉強する事の重要性です。当たり前ですけどね。やはりおおよそのことは過去に一度は誰かに考えられているんですよね。世間一般的に「いわゆる環境的」と言われている建築をしっかりと取り上げて、批評して、乗り越えて行く必要があると思います。


一般的に「環境的」というと、「省エネルギー」や「熱・空気・水・光・音」を思い浮かべる人が多いと思います。そいういった所謂「環境工学」の観点の追求ももっとしていけたらなと思っています。実際、研究をしていてわかってきたことは、「環境系」の世界はまだまだわかっていないことがいっぱいある、ということです。省エネ基準もつくられ、性能評価指標も多くつくられてきていますが、それらは「より良い建築をつくる」ためのものというよりは、「駄目な建築をさばく」ためという部分が大きいのではないかと最近では思います。環境って、要素が沢山あるし、人の感じ方も違うし、「最適化」というのは非常に難しいんですよね。というわけで、まだまだやれることはいっぱいありそうなんです。これに関しては、研究でわかってきたことを、ここにもフィードバックしていきたいと思っています。


近頃のDECoの活動はプロジェクトよりな感があるので、そろそろ研究活動にも力を入れて行きましょう。実際にプロジェクトで問題に感じたことをしっかりフィードバックした研究活動もいいですね。そういう意味で7/3の坂本功先生のインタビューはかなり重要なものになるので、頑張りましょう。