DECo 今後の展望
DECo 今後の展望
(文責:川島範久)
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DECoができてから1年が経ちました。
今年、大幅にメンバーが加わり、
合計20人以上の大所帯となりました。
ここで、自分の経験を踏まえつつ
もう一度、このDECoの存在意義を考えたいと思います。
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「環境的視点からのデザインとは何か。」
このテーマをもとに、
環境系、歴史系、意匠系、構法系と様々な系の院生が
現在、このDECoに集まってきています。
「環境的視点からのデザイン」というテーマであること。
分野横断的なメンバーが集まっているということ。
この2点が、このDECoの最大の特徴であり、ウリだと思います。
だからこそ、活動も分野横断的であるべきだと思います。
そして、その活動は最終的には「デザイン」に還元されるべきだと思います。
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僕は環境系の研究室にて
「設計・施工・運用時のトータルアセスメントに基づく省エネ住宅設計法の構築」
というテーマで研究をしています。
現在、多くの「省エネルギー住宅」が設計されているけれども、
その多くは経験に基づく定性的な予測による設計であり、
竣工後の住宅で設計通りの性能が発揮されているかは不明です。
また、どのように住み手に使われているかも不明です。
そこで、より省エネルギーで快適な住宅を実現するために、
設計段階での定量的な評価(シミュレーション)、
竣工後の定量的な評価(実測)を行い、
また運用の実態を把握し、
設計にフィードバックしていていこう。
また、それらの評価手法を整理、体系化することによって
省エネ建築の設計法を構築しよう。
という、まさに
「環境的視点」のひとつである
「省エネルギー」または「温熱環境的な快適性」
といった観点から「デザイン」を考え直そう。
といった研究です。
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といっても、
この研究が一体どう「デザイン」に関わってくるのか
イメージが湧かないと思います。
そこで、去年一年間研究を通して、
わかってきたこと、気づいてきたことについて
少し触れてみたいと思います。
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この研究を通して、改めて気づかされたのは
建物の「断熱性」と「気密性」の重要性、
そして、「住まい手」のライフスタイルの影響力の大きさです。
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近頃「環境」というテーマで様々なデザインコンペが行われていますが、
そういったコンペにおける学生の作品の多くは、
1.実際のコストや効果も知らない技術や設備を、強引に取り入れてみる。
2.「環境」を思い切り広義に捉え、本当の問題からは目をそらす。
といった2パターンに分類できるのではないかと思います。
実際に、受賞作品群を見ればそうだと一目でわかりますし、
実際、僕らもまだまだそんな感じです。
カワシマコミヤマでの共作の第一作目なんてまさにその極みです。
実際、それは致し方ないことだと思います。
環境技術にしろ、構造にしろ、
本当の意味でそのエッセンスをデザインに活かすレベルになるには
余程の知識量がないと難しくて、
デザイン系でデザインのみを学んでいる学生のみでは
なかなか厳しいものだと思います。
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「環境技術」をデザインに活かすことは当然大切なんだけれども、
その「目的」をもっと意識するべきだと思います。
みな「カタチ」を変えることに急ぎすぎているように思います。
たとえば、一番オーソドックスな
「省エネルギー」「快適性」の向上を目的とする場合、
最も効果的なものが何なのかを理解しておかなければなりません。
「省エネ」で「快適な」住宅を達成するために
「性能」として一番重要なのは「断熱性」「気密性」です。
省エネコンペなどでは
日射の線や、風の通り道の線を描いておけば
「環境的」っぽいという流れがあるように感じます。
もちろん日射制御や自然通風なども非常に重要なことですが、
「断熱」「気密」というのも地味ですが非常に重要です。
この重要さはあまりデザイン系の学生にはあまり伝わっていないように思います。
実際、僕も全然よくわかっていませんでした。
それは当然で、「絵」にならないからなんですよね。
断熱材を具体的に指定したって、
リアリティーは上がっても
なかなか「絵」にならない。「カタチ」にならない。
でも、「省エネ」ということを考えたときに
住宅においては、
いくら自然通風をできるようにとか「カタチ」をいじることより
「断熱性」「気密性」を上げることのほうが余程効果は大きいのです。
そこは理解しておかなければなりません。
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また、なにより理解しておかなければならないのは、
住み手の「ライフスタイル」なり「使い方」の影響力の大きさです。
たとえば、どれだけ自然通風や日射を取り込めるような空間構成にしようとも
もし、ユーザーが平日の日中の大半は不在だった場合、効果はありません。
また、どれだけ建物性能を上げて、省エネな機器を導入しても
住み手の使い方次第で、全く省エネじゃなくなります。
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現時点で思うのは、
「環境的視点からのデザイン」を考える際に
あまり「カタチ」に現わすことを意識しすぎないこと
が重要なんじゃないかと思っています。
システムなり、設備の選択・配置なり、ディテールなりの
あまり大雑把な「カタチ」には現れてこない部分にも
設計する本人はもちろん、それを評価する人間も
しっかりと価値を認めていくこと。
そうしていかないと
なかなか先に進まないような気がします。
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とにかく「環境的視点」から「デザイン」を考えるのは難しいです。
かといって、両方の分野を全て理解するのは、なかなか難しいことです。
なので、
自分の範疇でのみデザインをやるのではなくて、
実際にその専門分野で研究をしている人間に聞いてみるなり、
もしくは一緒にデザインに挑戦してみるのが良いと思うのです。
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DECoのことを考えてみると、
設計を主にやっている人と
研究を主にやっている人がいます。
この特徴を活かさない手はありません。
逆に、活かさなければ「DECo」はあり得ないと思います。
「研究」と「実践(設計)」があってこそDECoなのです。
デザインをしてないとわからないことが一杯あるし、
研究をしてないとわからないことも一杯あります。
そこをうまくフィードバックし合いながら
今後の建築を考えて行きたいですね。
最近「ものづくり」に関する活動が増えてきましたが、
体制が整ったら
しっかりと「研究」活動も復活させましょう。