転がる岩の山

(文筆:甲斐)


僕もスタジアムの事に関連する話をします。

留学中に旅行した際に、ポルトガルのブラガという都市にあるスタジアムに足を運ぶ機会がありました。
スタジアムの設計はポルトガル人建築家のEduardo Souto de Moura
僕はサッカーにはあまり詳しくないのですが、EURO2004開催のためにブラガ市が建てたのだそうです。

ブラガはポルトガル国内では北部に位置しており、ポルトからバスで一時間程行った都市。
都市の規模に対して、スタジアムが異様な存在感を放っているのが非常に印象的でした。

スタジアムでは毎日、英語ガイドによる見学ツアーを行っているので、僕もそれに参加しました。
ルートは選手控え室、観客席、グランド、グランド下等のほとんどの場所を約一時間かけてまわります。
スタジアムの詳細に関してはel cloquisでEduardo Souto de Mouraの作品が扱われている号があるのでご存知の方も多いかもしれません。
なので、ガイドの方が言っていた事の中で、特徴的な事を思い出しながら書いてみたいと思います。


構造に関して
片側のスタンドが岩盤に対して数百本に及ぶアンカーを打ち込んであり固定されており、そのアンカーも長いものでは60mに及ぶ。さらにその内の何本かにはセンサーが付いている事で岩盤の微小な挙動を把握出来る様になっているとの事。
そしてもう一方のスタンドも当然自立してはいるが、屋根を吊っているケーブルにより反対側のスタンドと繋がれている。観客が入るとその重みでスタンドは後ろに倒れる様な荷重が掛かり、屋根を吊るケーブルが張るというmoving structureになっているとの事です。
従属的に変化する’柔らかい’建築として。


設備に関して、
吊られた屋根は崖の方に向けて僅かな勾配がつけられており、写真にもある様に、崖側にある取水棟のようなもので雨水を受け取りスタジアムの地下に送られる様になっている。スタジアムで使われる水の80%はそのような中水により、グランドへの散水、トイレで流す水等の用途に、循環した水を使うシステムがとられている。との事でした。
大規模な施設を運営するための環境配慮的な工夫



圧倒的な存在感と、様々な工夫。
留学中に見た様々な建築の中でも、ヒトキワ強烈な印象を受けました。


しかし、いざ帰ろうと歩きはじめるとスタジアムから少し離れた所に転がる、所在無さげなおびただしい数の岩の山。スタジアム完成から二年程経っていたはずである。

スタジアムには感動しました。
しかし実は去る間際に見た、その印象が今でも一番強く残っています。